総務で新しいことにチャレンジできる環境を求めて、ベンチャー企業への転職を考える人がいます。
ベンチャー企業は新しい事業を立ち上げて間もない会社であるため、将来的に大きく成長する可能性を秘めています。またベンチャー企業は最先端の技術を用いて事業に取り組む会社が多く、チャレンジ精神の強い人たちと一緒に仕事ができることに魅力を感じる人も多いでしょう。
しかしながら、ベンチャーの中小企業は必ずしも将来成功することが確約されていません。そのため、不安定な環境の中で働くベンチャー企業の特徴を事前にしっかり押さえておくことは非常に重要となります。
そこでここでは、ベンチャー企業の総務へ転職する前に知っておくべきポイントについて解説します。
もくじ
ベンチャー企業の総務へ転職する理由
そもそもなぜ給料や待遇面で大手企業に見劣りしがちなベンチャー企業の転職にチャレンジする人がいるのでしょうか。
一般的には安定した収入が望める大手企業や中小企業の総務へ転職することを選ぶ人が多いですが、あえてベンチャー企業の総務へ転職する人には、以下のような共通した転職理由があります。
- 大手企業や中小企業の総務では経験できない新しい仕事にチャレンジしたい
- 転職を決めたベンチャー企業の経営ビジョンに共感した
ベンチャー企業は設立して間もないため、社内制度が確立していない会社の総務で新しい取り組みにチャレンジしたいと考えて転職を決断する人が多いです。私が大手企業の総務からベンチャー企業の総務へ転職したときも同じような考えでした。
しかし、いくら最先端の技術や見栄えのよいサービスを扱っていても、社長が考える経営ビジョンに共感できなければ、その企業で働きたいと思わないはずです。つまり、転職して成長できる環境や目指す方向性がベンチャー企業の経営ビジョンと一致するからこそ、ベンチャー企業へ転職する価値があるのです。
そのためベンチャー企業の採用選考では、転職希望者が目指す将来的なビジョンが共感できるものであるかどうかで、採用の可否を判断する企業もあります。
ベンチャー企業の総務の仕事内容
ただ、そのようなベンチャー企業の総務の仕事内容が気になる人もいるでしょう。
ベンチャー企業の総務は事業が軌道に乗って規模が大きくなれば、大手企業や中小企業の総務と同じような仕事内容をこなすことになります。しかし事業が軌道に乗るまでは、社内制度が確立されておらず不安定な状況の中で非常に幅広く仕事をこなすことになります。
例えば、下記の求人票はベンチャー企業の秘書・総務の求人募集になります。
上記のベンチャー企業へ転職した場合、総務の仕事だけでなく、経営陣のスケジュール管理、顧客や取引先との窓口対応(電話・メール)、情報管理などさまざまな業務を担当することになります。このほか、企業によっては会社の広報PR、ブランディング戦略の企画にまで携わるベンチャー企業もあります。
また求人を出しているベンチャー企業によって総務のポジションで担当する仕事内容は違います。同じベンチャー企業であっても、どれぐらい事業の成果を上げているか、どのような人材が足りていないかは個々のベンチャー企業によって状況が異なるからです。
そのためベンチャー企業の総務の求人に応募するときは、募集背景や仕事内容をしっかり確認して転職した後のイメージを作るとよいです。
ベンチャー企業の総務は社内制度の構築にも携わる
なお入社当初から社内制度や仕事のルールが確立されている大手企業や中小企業の総務では、新たな制度や仕組みをつくる業務はあまり経験することができません。社内制度や仕事のルール変更は企業経営に大きな影響を与えるため、結果的に検討しても制度が変わらない企業が多いからです。
その点、ベンチャー企業は将来的に上場することを見据えて常に変化を求めていくため、中には社内規程や人事制度などの構築に積極的に携わりながら仕事を進める企業があります。
例えば、下記の求人票は愛知に本社があるITベンチャー企業の総務の求人募集になります。
上記求人票のベンチャー企業へ転職した場合、総務に関わるさまざまな仕事をこなしながら全社に関わる仕事のルールや制度の設計、ワークフローの企画・運営に携わることができます。このようにベンチャー企業の総務では、大手企業や中小企業では中々経験できない社内制度の構築にも携わることができます。
私がベンチャー企業の総務へ転職したときも、社内規程や福利厚生の制度があまり整備されていない状況でした。そのため離職率の低下を目標として、整備されていない社内制度の構築に取り組んだ経験があります。
ただ設立間もないベンチャー企業は、そもそも事業を軌道に乗せて成長し続けなければ経営を続けることができません。そのためベンチャー企業の成長過程では、新しい制度を構築し続けていくことは当たり前のことと捉えることができます。
ベンチャー企業の総務に転職するメリットやデメリット
しかし、ベンチャー企業の総務へ転職することはプラスになることばかりかというとそうではありません。
ベンチャー企業へ転職することによるメリットは確かにありますが、一方でデメリットがあることも事前に知っておくことが大切です。 自身の理想を追い求めて勢いでベンチャー企業の総務へ転職し、後悔する人もいるからです。
そうならないためにも、ベンチャー企業の特徴を押さえながら転職によるメリットやデメリットを理解する必要があります。 ここでは、ベンチャー企業への転職によるメリットやデメリットがどのようなものであるかについて大手企業の実態と比較しながら解説します。
ベンチャー企業への転職によるメリット
まず、ベンチャー企業への転職によるメリットには、以下のようなものがあります。
①仕事の意思決定が早く、スピード感のある仕事ができる
大手企業のように仕事の手順や規則が確立されていないベンチャー企業の総務だからこそ、スピーディーに仕事をこなすことができるメリットがあります。例えば、ベンチャー企業の総務であれば同じフロアに社長の席があり、そのまま社長に相談しながら仕事を進める企業もあります。
そこで社長が即決すればすぐに実行に移していくことができます。たとえ同じフロアではなくても従業員や事業の意思決定に関わる人が少ない分、企画案の可否について社長が判断するまでの時間が非常にタイトです。
それに対して大手企業の総務では、1つ1つの事業に対して意思決定に必要な稟議書(りんぎしょ)を作成し、総務係長・総務課長・総務部長などの承認を得る必要があるため、実行するまで非常に時間がかかります。
大手企業の総務に勤めていた私の経験を例に挙げると、社内規程の改訂案を何時間もかけて作成し、直属の上司(総務係長)からようやく承認されたのに次の総務課長の意見が食い違い、はじめから改訂案を作り直すといったことがありました。
たとえ急ぎの案件であっても上記の例のように、はじめからやり直すこともあるため非常に焦りを感じながら業務をこなすことが多くありました。仕事の中には簡単な事務作業もありますが、事業の意思決定に多くの上司が関わる場合は時間のかかる作業となるケースが多いです。
このようなことから、稟議制度が確立されていないベンチャー企業の方が大手企業よりも圧倒的にスピード感のある仕事を経験することができます。
②自発的に仕事に取り組むことができ、考えるクセが身に付く
なお大手企業の場合、配属された直後は先輩職員から教わりながら仕事を進めたり、教育研修制度が整っていたりします。しかしベンチャー企業では、社員教育や教育研修にまで資金源を確保する余裕はほとんどありません。
そのため基本的にベンチャー企業の総務では自発的な行動を求められ、分からないことは極力自分の力で調べながら仕事を進めることになります。
例えば、初めてイベントの企画を任されたときに「イベントのコンセプトをどうするか?」「イベントの会場の場所をどうするか?」など、イベントを開催するにあたって必要な情報や手続きをすべて1人で企画していくことがあります。
このような教育制度が充実していない環境の中で実務経験を積み上げることで自然と考えるクセが身に付き、企画力や提案力のスキルアップにも結び付いていきます。
③若手でも裁量のある仕事を任される
また組織が確立されている大手企業の場合、あらかじめ役職や担当者ごとに仕事の役割が決まっている会社がほとんどです。
一方、ベンチャー企業では資金源がなく限られた従業員しかいない状況の中、次々と新しい仕事が発生するため年齢関係なく若手であっても責任のある仕事を任されることが多いです。
例えば、下記の求人票では20代でも活躍できることをアピールしているベンチャー企業の総務の求人募集になります。
上記のようなベンチャー企業へ転職した場合、若手であっても総務の仕事が慣れてきた時点で裁量のある仕事をどんどん任されるようになります。大手企業では責任のある仕事をいきなり個人に充てられることはほとんどないため、ベンチャー企業ならではの特徴ともいえます。
ただし、責任のある仕事を任されることはそれなりの仕事量であることが想定されます。そのためスキルアップは期待できる反面、残業せずに帰れることはほとんどないと考えた方がよいです。
ベンチャー企業への転職によるデメリット
ここまでベンチャー企業への転職によるメリットについて述べましたが、次にデメリットについて解説します。
①経営が安定していない分、倒産のリスクがある
基本的に大手企業は、すでに資本経済で成功している事業があり資金力が豊富にあります。そのため、不景気による大きな影響を受けない限り倒産やリストラがすぐに行われることはありません。
一方、大手企業と比べてブランド力がなく成長過程にあるベンチャー企業の事業は必ずしも成功する保障はありません。事業が軌道に乗らず赤字経営が続いてしまうと、大手企業のように資金力がないため最悪の場合倒産する可能性があります。
例えば総務で企画した広報PRイベント事業を実施した結果、想定していたPR効果が生まれず収益に結びつかなかったとします。そのような場合、PR事業に投資した金額によっては資金繰りが厳しくなり、倒産へと繋がる可能性もあるのです。
もしそうなってしまった場合、再度転職活動に取り組まなければいけません。そのため、ベンチャー企業への転職はリスクが高いものとなることを理解したうえで転職しなければいけません。
②転職後は年収が低くなる可能性が高い
ベンチャー企業だから年収が低くなるというわけではありませんが、ベンチャー企業は人件費に大きなお金を分配できるほどの資金源を確保できない企業が多いです。
実際に社内制度が確立されていないベンチャー企業では、大手企業のように福利厚生を手厚く受けることができなかったり、ボーナスが支給されなかったりする企業もあります。
また総務の求人を出しているベンチャー企業によって転職後の年収は違うため、年収が高い企業からベンチャー企業へ転職した場合、転職後の年収は下がってしまう可能性があります。
しかし、一部のベンチャー企業の総務求人で高い年収を提示している企業もあります。例えば、下記の求人票は東京に本社があるベンチャー企業の総務の求人募集になります。
上記求人票のベンチャー企業へ転職した場合、転職後の年収は600~899万円と比較的に高い年収を実現することができます。
ただしベンチャー企業への転職でこのような高い年収を実現させるためには、これまでの総務の経験から評価できる実績があり、ベンチャー企業が求めるスキルに見合う人材でなければいけません。
またベンチャー企業の場合、転職後に活躍して企業の成長に貢献し高い評価を得られれば、たとえ総務であっても転職前より高い年収を実現できる可能性はあります。シビアですが、取り組む事業の結果や企業からの評価次第で年収が上下します。
③働く時間が必然的に長くなる
なおベンチャー企業へ転職しても、できるだけ残業はしたくないと考えているのであれば考え方を改めなければいけません。
ベンチャー企業の総務で採用されたのあれば、総務や人事関連の雑務をこなしながら確立されていないあらゆる社内制度を1から作り上げていくことになります。そのためベンチャー企業の総務では、残業を覚悟しなければいけません。
例えば、社内規程、人事制度、福利厚生制度などを1から構築することは事例検討を含め非常に手間のかかる作業となります。企業によりますが、定時で帰ることができる日は少ないと考えた方がよいです。実際に私も大手企業の総務からベンチャー企業の総務へ転職したあと、残業時間がかなり増えました。
またベンチャー企業では、取り組む事業が軌道に乗るか倒産するかも分からない状況の中で、従業員1人1人が成果を出すために必死で働いています。そのような中で、労働時間を管理する総務の社員が呑気に定時で帰るようではベンチャー企業の総務を勤めあげるのは厳しいといえます。
そのためベンチャー企業の総務へ転職を考えるのであれば、残業が多くなることは覚悟しなければいけません。
即座に行動できる人はベンチャー企業に向いている
なお経営環境の変化が激しいベンチャー企業の総務では、即座に行動できる人材が仕事に向いているといえます。
これまでも述べましたが、ベンチャー企業では何もない状態から手探りで新しい制度や仕組みづくりにチャレンジする機会が多いです。このような業務には前例がないため、まずは実行してその結果をもとに改善策を打ち出しながら仕事を進めていかなければいけません。
そのためバックオフィス業務といわれる総務であっても、新しい制度づくりや仕組みづくりが必要となるベンチャー企業の総務では即座に行動できる人が仕事に向いているといえます。
過去に私が勤めていたベンチャー企業の総務でも非常にスピード感を求められる業務が多くありました。例えば、私が担当した社内規程の策定は前例がないものばかりで、策定に必要な情報を書籍やインターネットから集めながら組織規程や個人情報管理規定などの規定を次々に作りあげていきました。
転職した当初、事業の拡大とともに従業員が急激に増えている会社でもあったため早急に制度を作り上げていくことが求められる会社でした。
このようにベンチャー企業の総務では、激しい環境変化の中で目の前の課題を次々にこなす場面が多いことも事前に認識しておく必要があります。
後悔しないベンチャー企業への転職を実現させる
ベンチャー企業へ転職することに興味を持つ人は多いですが、ベンチャー企業の働き方の実態について理解を深めることは重要です。
「裁量のある仕事ができる」「若いうちから活躍できる」といったイメージが先行してしまい、ベンチャー企業への転職によるリスクがあることを軽視しがちになるからです。
また転職する時点で事業が確立されていないベンチャー企業の将来性を見抜いて転職することは難しいのが現状です。ただ大手企業の総務では経験できない社内制度や人事制度の構築に携われることは、スキルアップに必ず繋がります。
しかしながら、数あるベンチャー企業の中からどのような総務の求人が自身に合うのか不安になる人もいます。そこで転職サイトに登録し、求人の幅を広げながら転職活動を進めるとよいです。
今働いている環境では成長できないと考えていても、焦って転職するとベンチャー企業の厳しさを体感したときに必ず後悔し、挫折してしまうでしょう。
そこで、リスクを背負ってでもベンチャー企業の総務へ転職して実現したい明確な目的について真剣に考えてから転職に挑むようにしてください。
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