総務で働く雇用形態は「正社員」「契約社員」「派遣社員」「パート・アルバイト」の4つのパターンがありますが、その中でも正社員へ転職できないか検討する人は多いです。
これまで非正規雇用で働いてきた人が総務の正社員へ転職できれば、長く安定して働くことができ、年収アップが期待できるのは確かです。
ただ、総務の正社員へ転職することはメリットばかりではなく、デメリットがあることも事前に理解しておかなければいけません。また正社員として働くと決めた以上、働く条件や勤務形態を見極めながら自分に見合う求人を見つけ出す必要があります。
そこでここでは、総務の正社員求人へ転職することによるメリット・デメリットや年収の実態を中心に解説しながら、正しい求人の見つけ方について確認していきます。ここで解説することを理解できれば、正社員の総務へ転職するときのミスマッチを防ぐことができます。
総務の正社員求人へ転職するメリット
正社員として総務の求人へ応募する前に、転職するメリットがどのようなものか理解しておくことは重要です。転職した後に正社員として働くメリットが見いだせないのであれば、無理に正社員として働く意味がないからです。
また非正規雇用でずっと働き続ける不安から、正社員へ転職することのメリットについて何となく分かっている人もいるでしょう。ただ、これまで正社員として働いたことがないため漠然としたイメージしか描けないのが現状です。
実際に正社員として総務の求人へ転職するとき、以下3つのメリットがあります。
- 安定した生活に必要な年収を確保しやすい
- スキルアップがしやすい環境で働くことができる
- 福利厚生が充実し、安定した働き方ができる
上記のメリットが考えられます。
契約社員や派遣社員といった働き方が悪い訳ではないですが、総務の正社員へ転職を考えているのであればここで述べるメリットは理解しておくべきです。そこで、正社員として総務へ転職するメリットについて解説していきます。
安定した生活に必要な年収を確保しやすい
まず、正社員として総務への転職を検討している人の多くが、安定した収入を確保したいと考えているでしょう。
家庭を持たない独身者は正社員でなくても問題ないかもしれませんが、結婚や出産、育児などライフステージを考える女性であれば収入に不安が出てきます。
当然、男性であっても育ち盛りの子どもがいるのであれば、安定した収入が必要な時期もあるはずです。
例えば、契約社員や派遣社員の場合、雇用契約の内容によっては給料が時給換算の勤務先もあります。そのような勤務先で、時給の金額が上がることはほとんどありません。また、給料が年収ベースで支払われる勤務先であってもボーナス(賞与)が支給される会社は少なく、正社員より年収が低くなりやすいです。
一方、総務へ正社員として転職できれば安定した年収に加え、昇給によって基本給が上がったりボーナス(賞与)が支払われたりする会社が多いです。
例えば、下記の求人に記載されているように総務の正社員であれば昇給・賞与制度を採用している企業が多いです。
ただし、転職する企業によって昇給額や支給されるボーナスの金額は違います。
もちろんですが、大手企業や経営状況が良い企業である程、昇給額やボーナスの支給額は高い傾向にあります。中にはあまりボーナスが支給されない企業もあるので注意が必要ですが、ある程度の昇給やボーナスの支給が見込める総務の正社員求人であれば転職する価値はあります。
また上記求人のように、昇給・賞与制度については総務の正社員転職求人に記載されていることが多いため、必ず確認するようにしましょう。
正社員の総務へ転職しても年収はそこまで高くない求人が多い
また正社員の総務の求人へ転職したとき、年収が一気に上がるわけではありません。転職先の企業によっては、契約社員や派遣社員として働いていたときとあまり変わらない年収であることも考えられます。
ただ正社員の中途採用は、長く働くことが前提になります。そのため、昇給制度やボーナスの支給によって年々収入が上がっていく会社が多いです。
例えば、下記の求人票は東京に本社がある中小企業の総務・人事の正社員求人募集になります。
上記求人の企業へ転職したときの年収は、月給22~60万円とかなり幅が広いことが分かります。
もし仮に転職したときの月給が22万円だった場合、その他の手当やボーナスを含めると年収は300~350万円程度であることが想定されます。正社員として実務経験が豊富な人であれば、年収400万円以上の求人へ転職することも現実的になりますが、そうでない場合は250~350万円あたりの求人が多いです。
生活していく上でお金は大切ですが、総務へ正社員として転職することで一気に年収が上がる訳でもありません。そのため、年収だけに捉われず「これまでの実務が活かせる職場であるか」「安定した働き方ができる職場であるか」など、転職で重要となる他の要素も総合的に勘案して転職先の候補を絞り込むようにしましょう。
スキルアップしやすい環境で働くことができる
契約社員や派遣社員として総務で働く人は、正社員からお願いされるデータの入力作業や簡単な資料作成、電話対応などが中心となります。
一方、正社員として総務へ転職した場合、1つの事業を任されるなど責任のあるポジションを任されるようになります。例えば、社内イベント企画の事業を担当することになった場合、イベント企画の開催時期、イベント開催に必要な手続き、イベントに必要な物品などは自ら調べながら手続きを進めます。
このような経験を積み上げることで、総務事務のスキルを磨き上げることができるため、将来的なキャリアプランも立てやすくなります。
また総務は営業職のように経営利益を生み出す部署ではないため、最小限の従業員しか配置されていません。そのため、1人で複数のタスクを管理することになりますが、その分総務事務のスキルアップも同時に図ることができます。
例えば、下記の求人票は神奈川県に本社がある中小企業の経理総務の正社員求人募集になります。
上記求人の企業へ転職した場合、日常経理業務、伝票起票、売掛買掛金管理、月次・年次決算、総務業務など、その他の業務も合わせると非常に多くのタスクを管理することになります。
総務はどこの部署も対応できない仕事を全て引き受けるため、従業員1人当たりのタスクは必然的に多くなりがちです。覚える仕事が沢山あり、同時並行で仕事をこなすことは大変ですが、数をこなして経験を積み上げることで着実にスキルアップを図ることができます。
福利厚生が充実し、安定した働き方ができる
さらに総務の正社員として転職することで、企業の福利厚生を受けられる点も大きなメリットといえます。この福利厚生は会社によって内容が違い、基本的には資金力のある大手企業である方が充実している傾向にあります。
例えば、私が勤めていた大手企業の福利厚生では1ヵ月あたり8,300円の家賃補助や、9,000円分の昼食費の補助が出ていました。家賃補助と昼食費補助の1ヵ月あたりの合計額は17,300円となり、年間に換算すると207,600円支給されていたことになります。
このように福利厚生が充実している企業の総務へ正社員として転職できれば、生活費の負担が軽減されます。ただ、転職する企業によって福利厚生の内容は違うため、福利厚生の内容についても必ず確認するようにしましょう。
例えば、下記の求人に記載されているように総務の正社員であれば企業によって様々な福利厚生があります。
上記求人の福利厚生は参考程度ですが、交通費全額支給や住宅手当(最大30,000円)の諸手当のほか、資格取得支援制度、ドリンク無料支給、オフィスおかん(社食サービス)など、 給料以外に会社独自の補助を受けることができます。
会社によって福利厚生のバリエーションは違いますので、できる限り多くの求人に目を通すことが転職で後悔しないポイントになります。
総務の正社員求人へ転職するデメリット
しかしながら、正社員の総務へ転職することはメリットばかりではありません。正社員になることで安定した収入やスキルアップを図ることはできますが、その反面、正社員としての責任が大きくなるからです。
この他にも正社員の総務へ転職する場合、以下のようなデメリットが考えられます。
- 正社員の総務の求人数は少ない
- 面倒な作業にも柔軟に対応しなければいけない
- 転職先の企業によっては残業がある
上記のデメリットについて、具体的に解説していきます。
総務の正社員求人数は少ない
正社員として総務へ転職しようと考えたとき、最も大きな壁となるのが求人数の少なさです。
正社員の中途採用の中でも営業職であれば人の入れ替わりが激しいため、求人数は比較的に多いです。しかし総務を含めた事務職は人の入れ替わりが少なく、求人数も非常に少ない現状があります。
厚生労働省の発表によると、2018年平均の有効求人倍率が1.61倍となっている一方で、総務を含む一般事務の有効求人倍率は0.37倍と競争率が非常に高くなっています。そのため、自分の条件に合いそうな総務の正社員求人を見つけたしても応募者が殺到することも考えられます。
また技術革新と時代の流れから、手続きにおける単純な入力作業などは将来的にAI(人工知能)の発達によって自動化が進むことも予想されます。
例えば、下記の記事は2017年に金融業界最大手のメガバンク(みずほ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行)がAIを活用した事業計画を発表したときのものになります。
このように、簡単な事務作業などはAIの導入によってシステム化されていくことが想定されます。そのため、総務の正社員求人数が今後増えることは考えにくいといえます。
面倒な作業にも柔軟に対応しなければいけない
総務の正社員として転職した場合、責任のある仕事を任される分、面倒な対応に追われることも覚悟しなければいけません。
総務の正社員は1人で複数のタスクを抱えながら、従業員や訪問客(顧客)、事業の委託事業者など社内社外問わず多くの利害関係者と接することになります。そのような環境で、面倒なことに巻き込まれる場面はいくつもあります。
例えば、私が大手企業の総務に勤めていたときの実体験ですが、社長が出席する会議の準備は万全だったにも関わらず、会議の直前に総務部長や総務課長から資料を作り直すように指示され、対応に追われた経験を何度もしました。
そこで1人だけでは対応しきれないと判断したときは、周りの従業員に事情を説明し、手伝ってもらうこともありました。ただ周りの従業員に仕事の手伝いをお願いするとき、それぞれの従業員にも担当の仕事があり、気を遣うことになります。
このほか、「窓口の従業員の態度が悪い」「従業員の服装がだらしない」といったクレームにも対応しなければいけないときもあります。私はクレーム対応の担当ではなかったのですが、結果的に1時間ほどクレームを聞き続けるようなこともありました。
このようなクレーム対応は決して頻繁にあるわけではないのですが、いつどのような形で対応に追われるか分かりません。そのため正社員として総務へ転職を考えているのであれば、タスク管理が多い分、面倒な作業が起きるリスクを抱えていると認識しておく必要があります。
転職先の企業によっては残業がある
なお、総務の正社員求人を狙う人の中には、「総務は事務職だからそこまで残業なく帰れるのでは?」とイメージしている人もいるでしょう。もちろん、残業なしに帰ることができる日もありますが、転職する企業の総務の体制や担当する仕事が立て込む時期は残業を避けられないこともあります。
例えば、私の経験ですが、担当していた社内規程の改訂作業で急いで改訂稟議書を作成する必要があるときに、他に担当する業務の対応に追われて結果的に残業せざるを得ないことがありました。
このほか株主総会開催前の準備期間では、経理部門との連携業務や株主に配布する資料の作成、会場の準備など業務量が非常に多く、総務メンバー全員で残業するような日もありました。
このような残業は一例ですが、総務の正社員は複数のタスクを管理するため、何か緊急的な対応が発生したときに他の業務の進行に影響が出ることもあります。どれだけ残業するかは実際に転職してみないと分からないことが多く、求人票に残業時間が記載されていても参考程度でしかありません。
例えば、下記の求人票は千葉県に本社がある中小企業の総務の正社員求人募集になります。
上記求人のように、ほとんど残業がない職場であることをアピールポイントとしている企業もあります。このような求人であれば、実際に転職しても残業が少ない企業である確率は高いです。
ただ緊急的に対応しなければいけない事案が発生した場合、残業しなければいけない日もあることは覚悟するようにしましょう。
もし、育児や介護など家庭の事情でどうしても残業できない事情がある場合は前もって面接時に伝えるようにしてください。そうした条件で採用されるようであれば、あまり残業せずに定時で帰ることができます。
実務経験を活かせる総務の正社員求人を探す
では、これまで契約社員や派遣社員として働いてきた人が正社員の総務へ転職を考えるとき、どのような求人を選べばよいのでしょうか。
総務の正社員求人では、基本的に即戦力(総務の実務経験者)となる人材が求められます。即戦力の人材を採用した方が企業にとって、教育や研修にかかるコストを抑えることができ、採用直後から活躍してくれる可能性が高いからです。
そこで、非正規雇用の契約社員や派遣社員として総務で働いてきた人が総務の正社員求人に応募するとき、これまでの実務経験が考慮されるのかが気になります。しかし雇用形態にかかわらず、総務事務の経験を積み上げてきたことに変わりはありません。そのため、未経験者ではなく総務事務経験者として応募することは可能です。
ただし即戦力と判断されるためには、契約社員や派遣社員として経験してきた実務内容が応募する求人の仕事内容とある程度一致する必要があります。
例えば、下記の求人票は東京に本社がある中小企業の人事・総務の正社員求人募集になります。
上記求人の企業へ応募する場合、人事・総務事務の経験があれば、これまで契約社員や派遣社員であっても応募することはできます。
また、以下に示す仕事内容の一覧は上記求人の詳細ページに記載されていたものになります。
このように人事・総務に関わる多くの業務例がありますが、全ての業務について実務経験がないと採用されない訳ではありません。
ただし、勤怠管理や給与計算、会議の準備手続きなど求人に記載されているような実務経験がないと即戦力として働くことは難しいと採用担当者は判断します。そのため、これまでの実務経験の内容と求人票に記載されている仕事内容を照らし合わせながら、応募する求人を選ぶようにしましょう。
未経験者が選ぶべき総務の正社員求人とは
また、これまで総務事務の経験がなくても総務の正社員を目指すことは可能なのか気になる人もいます。総務事務の未経験者は、総務の実務経験者を求める求人への応募は対象外となります。
しかし、総務の正社員求人の中には未経験者でも応募が可能な求人があります。そのような求人を募集する企業は未経験者でも社内教育して、できる限り長く働いてもらえるような人材を確保したいと考えています。
そこで、これまで総務事務の経験がない人で総務の正社員にチャレンジしたい人は、未経験者でも応募が可能な求人を探すようにしましょう。
例えば、下記の求人票は東京に本社がある中小企業の総務の正社員求人募集になります。
このような求人であれば、総務事務の未経験者でも応募することができます。
これまで総務の正社員として働いたことがない人は未経験者でも受け入れてくれる企業へ転職し、総務事務の経験を積み上げることが重要です。そうして実務経験を積み上げれば、将来的なキャリアプランも立てやすくなります。
ただし上記求人にも記載がありますが、総務事務の未経験者が応募可能な求人の多くで「Word、Excelなどの基本的なPC(パソコン)操作スキル」が求められます。そのため、総務の実務経験がなくても資料作成で頻繁に使うWordやExcelは問題なく操作できるレベルであることが望ましいといえます。
中途採用でも女性が活躍できる総務の正社員求人へ転職する
なお、結婚・出産・育児などのライフステージを充実させながら、できるだけ正社員として働き続けたいと考える女性は多いでしょう。
契約社員・派遣社員の場合、育児休業を取得できる会社は少ないため、女性にとって妊娠や出産を経て同じ職場で働き続けることが難しい現状があります。
しかし、総務の正社員求人の中には女性のライフステージに理解のある企業もあります。例えば、下記の求人票は東京に本社がある中小企業の総務人事の正社員求人募集になります。
上記求人のように女性が活躍できる環境を実現するため、産前産後休暇や育児休業制度の整備に力を入れている企業もあります。このような求人であれば安心して子育てできるため、女性でも転職しやすい企業であるといえます。
日本では男性が育児休業を取得する確率は非常に低く、子育ての中心は女性である家庭が多いです。そのため、長く安定した働き方ができる職場を選びたい場合、女性が活躍できる企業を選ぶことも考えてみてください。
正社員として総務へ転職する価値を考える
正社員、契約社員、派遣社員など働き方を選ぶのは自由ですが、正社員の総務へ転職を考えているのであれば、なぜ正社員にこだわるのかを考えてみてください。「収入を上げたい」「安定した働き方ができる企業へ転職したい」など、契約社員や派遣社員にはない魅力的な部分があるでしょう。
ただし正社員への転職を考えるのであれば企業の一社員として責任を負うことになるため、安易に考えてはいけません。そのため、これまでの実務経験を活かすことや転職後のキャリアを含め、どのような求人が適切であるのかを考えた上で応募する必要があります。
しかしながら、数ある総務の正社員求人の中からどのようにして自分に見合う求人を選べばよいのか不安になる人もいます。そこで複数の転職サイトへ登録し、できる限り多くの求人情報を見ながら効率良く転職活動に取り組むようにしましょう。
そうすることで、これまで正社員で働いたことがない人でも正しい知識を持って転職活動に取り組むことでき、正社員の総務へ転職することはできます。そして、ここで述べてきたポイントを押さえながらあなたの転職したい条件を明確にすれば、自分の見合う求人を見つけることができます。
事務転職で失敗しない転職サイトの活用法とは
事務転職を考えるとき、多くの人が転職サイトを活用します。ただ事務職は倍率が高く、簡単には転職できません。自力で転職先を探そうとしても、1件1件求人を見極めるには相当の労力を使います。またエントリー書類(履歴書・職務経歴書)の作成や面談対策、転職条件の交渉まで自ら行う必要があります。
しかし転職サイトに登録すれば、カウンセリング実施後にキャリアアドバイザーから転職条件に見合う求人を無料で紹介してもらえます。さらに履歴書や職務経歴書の添削、面談対策、転職条件の交渉まであなたの代わりに行ってくれます。
ただし、「多くの求人を紹介してくれる転職サイト」「カウンセリングに力を入れている転職サイト」「女性の転職支援に力を入れている転職サイト」など、選ぶ転職サイトによって特徴や強みに違いがあります。これらのことを理解した上で転職サイトを活用しなければいけません。
そこで以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの特徴や強みの違いを理解して活用すれば、事務転職の失敗を防ぐことができます。