ファシリティマネジメントとは、企業が持つすべての資産を有効に活用する経営手法のことを指します。施設の修繕や維持管理だけに特化してきたこれまでの施設管理手法と違い、経営資源となるヒトや情報にまで考慮した戦略的な施設管理を実施する専門的な業務になります。

ただ日本の企業でファシリティマネジメントを導入している企業は少なく、資金に余裕がある大手企業を中心に取り入れられている現状があります。

また、ファシリティマネジメントの仕事内容や必要とされるスキルには特徴があります。そのため、ファシリティマネジメントが経験できる総務へ転職を考えている人は事前にそのような特徴を理解したうえで転職活動に取り組む必要があります。

そこで、総務のファシリティマネジメントへ転職するための正しい求人の見方や転職に必要となるスキルについて解説していきます。

総務のファシリティマネジメントの仕事内容、一般的な総務との違い

人件費と同じく、施設の維持管理にかかる費用は企業にとって大きな負担となります。

そのためファシリティマネジメントの手法を駆使して、長期的な施設運営を実現しようと考える企業が増えています。

例えば、私が勤めていた大手企業ではファシリティマネジメント事業の一環として、下記のような事業を実施しました。

上記の図は、私が大手企業の総務に勤めていたときに実施したファシリティマネジメント事業を図式化したものになります。このファシリティマネジメントを実施した結果、他部署の従業員との交流が自然と増え、互いの部署の仕事内容を理解し合う職場環境が実現しました。

また、事務用品として使うボールペンやクリップなどの消耗品を一括管理する場所を作り、それぞれの部署で消耗品を管理する手間を省くなど業務の効率化も一緒に実現しました。

このように経営効率や施設環境の最適化を常に考えなければいけないファシリティマネジメントは、数ある総務の仕事の中でも高い専門性が求められる業務といえます。

総務のファシリティマネジメントの求人例から仕事内容を知る

そのような高い専門性が求められるファシリティマネジメントの求人へ応募する場合、転職先でどのような仕事を担当するのか気になる人は多いです。

たとえ、これまでファシリティマネジメント業務を経験してきた人であっても転職先で同じような仕事ができるとは限りません。

転職先の企業によって経営課題や経営方針に違いがあるため、ファシリティマネジメントの担当者が取り組む仕事内容はそれぞれの企業によって変わります。

例えば、下記の求人票は大手上場企業の総務の求人募集になります。

上記求人の企業へ転職した場合、ファシリティマネジメントの専門家として物件のヒアリングや物件調査、賃料交渉など経営コスト削減に特化したファシリティマネジメント業務を任されることになります。

また、このようなファシリティマネジメント業務は企業の経営戦略の実行部隊となるため、戦略的ファシリティマネジメントともいわれます。

一方、企業によっては戦略的なファシリティマネジメント業務だけでなく、保有施設のメンテンナンスや施設管理を重視したファシリティマネジメント業務の求人もあります。

例えば、下記の求人票は東京または大阪が勤務地となる外資系不動産企業の総務の求人募集になります。

上記求人の企業へ転職した場合、本社オフィスの設備維持・保全、工事に関する手続き、会議室の利用状況の把握・維持管理などを担当することになります。

このようなファシリティマネジメントは日常的な施設の維持管理を中心とした業務になります。そのため、保有施設の長期的な運営を実現させることを目的としたポジションともいえます。

なお、ここまで紹介してきた求人はファシリティマネジメント業務の中でも施設管理に特化した求人になりますが、中にはさまざまな総務事務を兼任しながらファシリティマネジメントを担当する求人もあります。

例えば、下記の求人票は東京に本社がある大手上場企業の総務の求人募集になります。

上記求人票のように、ファシリティ業務以外にもイベント業務、福利厚生業務、庶務に関する業務など総務事務を兼任するポジションの求人もあります。ただ、ファシリティマネジメントの専門性については先に紹介した求人より低いことが想定されます。

同じファシリティマネジメントの求人であっても、転職先の企業によって仕事内容や目的が違います。そのため、あなたがこれまで経験してきたファシリティ業務の内容やそれ以外の実務経験を考慮し、どのような求人が自分にとってベストな求人であるのか見極める必要があります。

総務のファシリティマネジメントで求められるスキルとは

次に総務のファシリティマネジメントの求人へ応募する場合、どのようなスキルが求められるのかについて解説します。

まず、これまでファシリティマネジメントの実務経験のない人が転職先で即戦力として働くことはできません。戦略的な企画や保有施設の有効活用を図るファシリティマネジメントでは、専門的な知識を活用した実務が必要になるからです。

そのため、総務のファシリティマネジメントの求人でも実務経験者を募集する企業が多いです。

例えば、下記の求人票は東証一部上場企業の総務の求人募集になります。

上記求人の企業へ転職する場合、店舗・支店・工場などの設立に関わるプロジェクトマネジメント経験やファシリティマネジメント経験がなければ、応募の対象とはなりません。

特に、上場企業など大手企業のファシリティマネジメントは勤務先の設備にとどまらず、全国各地にある店舗や支店の設備まで担当することになります。このように全国各地に支店や店舗がある企業ではファシリティマネジメントの対象となる施設も多くなるため、即戦力として期待される実務経験者が採用される傾向にあります。

また求人数は少ないですが、中にはファシリティマネジメントの実務経験がなくても応募できる求人も存在します。

例えば、下記の求人票は大阪にある中小企業の総務の求人募集になります。

上記求人の企業へ転職する場合、応募の必須要件として社内外での折衝業務経験があれば応募することができます。何かしら事務手続きで社内従業員とやりとりしてきた経験や外部の業者と連携して事業を進めてきた経験があれば、応募資格を満たすことになります。

またコミュニケーション能力やフットワークの軽さなどはファシリティマネジメント業務に限らず、社会人として働く上で必ず必要なスキルといえます。

仕事内容と同じく、ファシリティマネジメントの求人で求められるスキルも応募する企業によって違いがあることも押さえておきましょう。

認定ファシリティマネージャーの資格は転職で有利になる?

なお、ファシリティマネジメントに関連する専門的な知識や実務を証明する資格として「認定ファシリティマネージャー」があります。

ここで「認定ファシリティマネージャーの資格取得者が転職で有利になるのか?」と考える人もいますが、決してそうではありません。ファシリティマネジメントのポジションを募集する企業のほとんどが単なる資格保有者ではなく、実務経験者を求める傾向にあるからです。

確かにファシリティマネジメントでは、企業が保有する施設の最適な運営・維持管理やそれに伴うプロジェクト企画の進行管理など専門的な知識が必要になります。そのため、認定ファシリティマネジャーの資格があることに越したことはありません。

勉強して身に付けた専門的な知識は、転職後にファシリティマネジメント実務で大いに活かせます。ただ転職は総合的な評価で採用の可否を判断するため、認定ファシリティマネージャーの資格を持っていれば有利になるという認識は捨てるようにしましょう。

工事業者・不動産業者とのコミュニケーションが不可欠

またファシリティマネジメントの計画を実行していく過程で、保有する施設のレイアウト変更や改修工事に関わる業者とのやり取りが多くなります。

実際に私が大手企業の総務に在籍していたとき、同じエリアにいたファシリティマネジメントの担当者は多くの工事業者やビル管理会社の担当者と意見交換をしていました。

特に、レイアウト業務は一度決めて実行すると後から変更することが大変な作業になるため、何度も入念な打ち合わせが必要になります。そのため、ファシリティマネジメントの求人の中には下記求人のように工事業者や不動産業者との円滑なコミュニケーションが取れる人材を求めるものもあります。

上記の求人はあくまでも一例となりますが、業者との折衝、交渉力がある人材でなければ応募資格を満たさないことになります。このような求人では、これまでのあなたの実務経験をもとに業者と連携しながらプロジェクトを進めてきた実績をアピールする必要があります。

具体的に必須要件として書いている求人は少ないですが、どのような企業でもファシリティマネジメントのポジションでは工事に関わる業者と円滑にやり取りすることが必須となります。

ファシリティマネジメントの求人は年収に差がある

実際にファシリティマネジメントの求人へ転職するとき、年収の相場はどれぐらいか気になる人は多いです。応募する企業によってファシリティマネジメントのポジションに対する企業の評価や価値は違うため、転職する企業によって年収は大きく変わります。

ただファシリティマネジメントは専門性が高い業務だけに、スペシャリストとして転職が実現すれば年収が上がることも想定されます。

例えば、下記の求人票は東京に本社がある大手上場企業の総務の求人募集になります。

上記求人の企業へ転職した場合、年収は700~1099万円になります。もし即戦力として企業から高く評価されて採用された場合は、年収が1000万円を超えることも考えられます。

ただしこのような求人は年収が高い分、ファシリティマネジメントの経験や知識が豊富な人材でなければ採用されません。また、採用されたとしても責任のある仕事を任されることが想定されます。

これまでファシリティマネジメント業務を積み重ねてきた人で、さらにスキルアップを目指したい人はこのような求人へチャレンジすることで高い年収が実現できる可能性もあります。ただ、このような求人は非常に少ないのが現状です。

このほか求人の中には、平均的な年収の企業もあります。例えば、下記の求人票は東京に本社がある中小企業の総務の求人募集になります。

上記求人の企業へ転職したときの年収は360~470万円となり、平均的な年収といえます。

また、これ以外にも年収が500~600万円程の求人もあります。そのため、転職後の年収は応募する企業によって差があることが分かります。

さらに転職した後の役職(平社員、マネージャー、管理職)によっても年収が変わるため、あなたのこれまでの実務経験内容や実務スキルによっても年収が変わります。

そのため背伸びして年収が高い求人だけに注目するのではなく、身の丈に合う求人を見つけることが転職を成功させるポイントです。年収だけにとらわれることなく、転職先でこれまでの実務経験が活かせるのか、転職してさらに成長できる環境があるのかも考慮して求人を選ぶようにしましょう。

ファシリティマネジメントの求人を狙うなら、転職サイトを利用する

ファシリティマネジメントの求人が気になり転職を考えている人は、ここまで述べてきたことを理解したうえで転職活動に挑むことが重要です。そこで自力でファシリティマネジメントに関わるポジションの求人を探すことも可能ですが、注意点があります。

本格的に転職活動を始める前に認識すべきことは「ファシリティマネジメントに専念する総務の求人数は非常に少ない」という事実です。

例えば、以下は大手転職サイトで「ファシリティマネジメント/総務」を検索したときの結果になります。

このように、大手の転職サイトで検索しても日本全国でたった19件しか求人がありません。

またファシリティマネジメントと総務事務を兼任する求人もありますが、そのような求人を含めてもそこまで求人数は多くありません。さらに応募する企業によって仕事内容や求められるスキルも違い、そのような状況の中で自身の希望条件に見合う求人を見つける必要があります。

そこで、ファシリティマネジメントが経験できる総務へ転職を目指す多くの人が複数の転職サイトを利用しています。

ただ転職サイトの担当者との相性があることや、より多くの求人情報を入手する方が希望どおりの求人を見つけやすいことを考慮し、登録は1社に絞らず3社以上の転職サイトに登録しましょう。

そして担当してくれる転職エージェントには、あなたの希望する条件を包み隠さずに相談するようにしてください。そうすることで、効率よくあなたの希望条件に最も近い求人を見つけ出すことに繋がるのです。

本気でなければ、ファシリティマネジメントに関わる企業へ転職できない

専門的な知識や経験が求められるファシリティマネジメントのポジションへ転職することは、そう簡単ではありません。ファシリティマネジメントに関わる求人の数が少ないうえ、応募条件として即戦力を求める企業が多いからです。

そのため、戦略的に転職活動に取り組まなければ中々転職先が決まらず苦戦することになります。

また企業の経営戦略に関わるファシリティマネジメントは総務事務の中でも特殊な業務といえます。そこで新しい仕組みを作り上げていくファシリティマネジメントが経験できれば、仕事にやりがいを持つこともできるでしょう。

どのような求人が自身に見合うかは、社会人として積み重ねてきた実務スキルや転職後のビジョンによって変わります。

これからのキャリアパスを考えたとき、あなたにとってどのような選択肢がベストであるのか十分に考えてから転職活動に取り組むようにしてください。

事務転職で失敗しない転職サイトの活用法とは

事務転職を考えるとき、多くの人が転職サイトを活用します。ただ事務職は倍率が高く、簡単には転職できません。自力で転職先を探そうとしても、1件1件求人を見極めるには相当の労力を使います。またエントリー書類(履歴書・職務経歴書)の作成や面談対策、転職条件の交渉まで自ら行う必要があります。

しかし転職サイトに登録すれば、カウンセリング実施後にキャリアアドバイザーから転職条件に見合う求人を無料で紹介してもらえます。さらに履歴書や職務経歴書の添削、面談対策、転職条件の交渉まであなたの代わりに行ってくれます。

ただし、「多くの求人を紹介してくれる転職サイト」「カウンセリングに力を入れている転職サイト」「女性の転職支援に力を入れている転職サイト」など、選ぶ転職サイトによって特徴や強みに違いがあります。これらのことを理解した上で転職サイトを活用しなければいけません。

そこで以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの特徴や強みの違いを理解して活用すれば、事務転職の失敗を防ぐことができます。